介護生活108 まばたきでコミュニケーション
<2019年12月31日 私から次男へのレター>
さて、次男坊、年末に高校のボランティア活動の一環で台湾に行ってきました。
台湾はおじいちゃん(父)がかつて単身赴任で支店長をしていた懐かしの地、私も母と姉と一緒に夏休みの間、父の元に遊びに行ったものです。
台湾と日本の高校生ボランティアの交流の一環なのですが、台湾に行って一緒にボランティア活動したり、ディスカッションしたり、文化財をみたりと。。。
当然のことながら中国語も自己紹介レベルは覚え、現地のパートナーと一緒に観光地巡りしたり。。。すいぶんと楽しい企画です。
そんな楽しい思い出を、台湾生活の大先輩であるおじいちゃんに報告するため、年末ぎりぎりに次男坊とKS病院へ。。。
でも。。。
この頃にはおじいちゃん、もうしゃべれないし、手にも力が入らないのかニギニギコミュニケーションもほぼできなくなっていました。。。
次男坊、そんなおじいちゃんに一生懸命報告しますが、当然ながら無反応。
聞こえてるのか?
次男坊の話が理解できてるのか?
そもそも彼が次男坊だってわかってるのか??
。。。。。。。。。
しばらくして「あれっ?」と。。。気付いた!
視線はちゃんと動いてるぞ!!!
んっ? こっちをちゃんと見てる!!!
人間、ぼやっとして物思いに更けている目と、ちゃんと話しをている時の目って見わけが付きますよね?
焦点があっているというか、瞳孔の微妙な調節が伝わるというか。。。
赤ちゃんの時から母親や父親の瞳を頼りに成長する私たち人間にとって自然と身についた見分ける能力なのかも?
そう、おじいちゃん、しっかり僕たちに焦点を合わせてこっちを「見ている」!
「ちゃんと聞いている!」
次男坊も気が付いたようで、話しかけながらちょっと一工夫を。。。
次男坊:「おじいちゃん、僕の話が聞こえてる? 聞こえたら瞬きをしてみて?」
おじいちゃん:ぱちっ、ぱちっ、ぱちっ
「おおおっ!!」っと歓声が病室に響きます。
次男坊:「おじいちゃん、聞こえるんだね? 僕、台湾行ってきました。おじいちゃん、台湾詳しいよね?」
おじいちゃん:ぱちっ、ぱちっ、ぱちっ
次男坊:「僕ね、中国語で名前が言えるんだよ。僕の名前の中国語の発音を現地の人に教えてもらったんだ。言ってみるよ! 聞いてね!「#$%&*+@¥(←中国語)」。どう、合ってる?」
おじいちゃん:ぱちっ、ぱちっ、ぱちっ
次男坊:「写真もいっぱい撮ってきた。台北だからおじいちゃんが住んでいたところの観光地だよ。ここ知ってる?」
おじいちゃん:ぱちっ、ぱちっ、ぱちっ
次男坊:「ここは美術館。有名だよね?」
おじいちゃん:ぱちっ、ぱちっ、ぱちっ
次男坊:「おじいちゃん、すごいね! 瞬きでお話しできている! 台湾、一緒にいけたらいいね!」
おじいちゃん:ぱちっ、ぱちっ、ぱちっ
次男坊、おじいちゃんの介護には積極的に、人一倍にお手伝いしてくれました。
最初の頃は長男が受験と浪人だったので、予備校か図書館でほとんど不在でしたので、老人ホームに入る前のおじいちゃんへの力仕事お手伝いはほぼ次男のボランティア。
初めの頃にご紹介した、肩のもみもみやタッチやお手洗いのエスコートなど。
それはそれは一生懸命に。。。
でも、次男坊、なぜかおじいちゃんにいつも叱られていたんですよね?
肩を揉んであげても、「ここじゃない、ここは違う!」とか。。。
立たせてあげても、「もうちょっとちゃんと支えなさい!」とか。。。
かみさんと、いつも「一番手伝っているのに。。。次男、可哀そうにねぇ。。。」っと話したものです。
本人は「なんだかいつも僕だけ叱られる~ 何で~」っと冗談っぽく、あまり気にしてなさそうなのが救いでした。。。
今、この話を次男坊にすると、その原因らしきものを打ち明けてくれます。
ある日、おじいちゃんからいつもの「Kさ~ん、Kさ~ん」連呼攻撃があった時です。
かみさんの体調が悪かったのか、何か他にお仕事中だったのか、次男坊が気を利かせて「お母さんは今日は出かけていません」と嘘をついたそうです。。。
ところがその後直にかみさんがおじいちゃんの前に現れてきてしまって。。。
おじいちゃん、かみさん見るなり開口一番、次男坊を指さし、「こいつは嘘つきだ!」と言ったそうです。。。
もちろん、おじいちゃんは既に認知症でしてので、その時、かみさんも次男坊も気にはしてなかったのですが。。。おじいちゃん、こういのは忘れないんですよね。。。
次男坊によると、「以来、おじいちゃんは僕の事ばかり怒るようになった」とのこと。
可哀想にね。。。
そういう背景があるのを知っているだけに、この「瞬きコミュニケーション」をするおじいちゃんと次男坊の姿がなんとも言えずに嬉しくなります。
おじいちゃん、やっと次男坊の嘘の意味が分かってくれたのかな?
いや、やっと忘れてくれたのかな?
いや覚えているけど、もはやどうでもよくなったのかな?
そんなわけで、僕は後ろから「次男坊、よかったよかった。めでたし、めでたし」と思うのでした。。。