おじいちゃん介護のお手紙メモリー

おじいちゃん介護のお手紙メモリー

数年間に渡る父の介護が、父の死去とともに終わり早1年、いろいろあった出来事をイラスト・レターにしたため、介護に協力してくれた3人の子供たちにちょっとずつ送ることにしました。ただ送ってももったいないので、ブログに記録し、同じような介護生活を過ごしている方々に紹介しようと思いました。いつまで続くか、どこまで書けるかわかりませんが、笑いあり、苦労あり、涙ありの介護生活をどうぞご覧ください。

介護生活48 なんとショートステイの日に転倒!

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No. 116

<2019年9月8日 私から次男へのレター>

さて、おばさんの入院は夏の間続くのでしたが、当然、子供たちは夏休み。

 

毎年夏休みに行っている伊豆のキャンプと海水浴は楽しみな夏のActivityの一つで、既に予約済みです。

 

ただ、今までの夏休みと今年は違います。。。

 

そうです。伯母さんが入院中。

 

ということは、おじいちゃん(父)のお世話をしてくれる大黒柱が欠けていると言う事です。。。

 

今までは私達家族5人が旅行に行けたのも、伯母がおじいちゃんを見ていてくれたからです。おじいちゃんが転倒したりしても、伯母がいれば救急車を呼ぶことができますが、その伯母も入院中。

 

頼りになる長男は、浪人中の大学受験生で旅行には参加しませんが、殆ど予備校やら図書館やらで勉強していたため、肝心の日中は家にはおらず。。。

 

この年は伯母が入院中ということで夏の旅行は中止かなぁ。。。

 

 

どうしようと考えた挙句、「ショートステイ」があるじゃないか?と気が付きました。

 

おじいちゃんにいきなりショートステイも勇気がいるので、旅行前に一度体験してもらいましたが、結構、ご機嫌に1泊を過ごしてきました。

 

介護センターに電話すると、1日の行事も楽しく過ごし、ご機嫌にお風呂に入り、ご機嫌に夕食も食べ、あっという間に寝てしまったとの事。。。

 

そういえば、以前の検査入院の時にすっかり「王様扱い」が気に入ったのかもしれません。。。

 

いろいろと立ったりすわったり、肩を揉んでもらったり、何度も便所に行ったりしてませんでしたか? と質問すると、デイサービスで既に慣れてるから大丈夫と。。。


なんとも心強い!

 

ということで、おじいちゃんに夏のキャンプの話をし、長男が家に残るけど、おじいちゃんにはショートステイに行ってもらう事をお話ししました。

 

おじいちゃん、話をちゃんと理解したかどうかはわかりませんが、「おう、それはいいなぁ。。。行ってきなさい、行ってきなさい」と。

 

ショートステイの話に対しては、いつもの如く「お前のいうことを信頼してるから、行けというなら行くよ」という返事。。。こんなんでいいのか悪いのか。。。

 

ということで予想外に順調にキャンプの準備がすすみます。

 

ところがキャンプ出発(=ショートステイ初日)の朝、いつものように新聞を取り、1階のおじいちゃんのところに行くと、なんだかいつもと違う空気が。。。

 

おじいちゃんの部屋をのぞいてみると。。。

なんとおじいちゃんがうつ伏せで倒れてる!

 

 

死んでる!

 

これが私の正直な第一印象。。。

 

あーっ、おじいちゃんが死んじゃった。

いつかこんな日が来ると思ってたけど、まさかショートステイに入れようなんて言い放ったばっかりに。。。そんな~。。。 もう少し親孝行したかったよ~。。。

 

と、茫然としてたら、かすかに声が。。。

 

おじいちゃん:「助けてくれ~、助けてくれ~。。。」

 

生きてる!

 

私:「どうしたのおじいちゃん!ころんじゃったの?いつ??」

おじいちゃん:「夜に転んだんだか、立てなくて困った。。。」

 

ここで、よいしょっとおじいちゃんを起こすのですが、何せ骨折してるかもしれないので慎重に。。。

 

私:「起こしてあげるから待って! 肋骨とか腕とか痛いところない?骨折してない?」

おじいちゃん:「大丈夫。何度も声を出したんだが誰も気づいてくれなかったんだ。そのうちに寝ちゃったんだよ」

 

と、ひょうひょうと答える。

 

前回は「孫の手」で壁を叩いて「孫」が呼べたのですが、今回は手が届く範囲に「孫の手」が無かったようです。。。

 

それにしてもおじいちゃん、若い時に町内相撲大会で優勝してるだけあって「がたい」がでかい。骨太で見た目よりも重い。。。

 

ようやく起き上がらせて、ベットに座らせると、顔が傷だらけに。。。

 

自分で起き上がろうとした時に何度も絨毯に顔を擦ってしまったらしく、あるいは最初に転倒した時の傷なのか、既にかさぶたにはなっていたけど、ランニングシャツにも血のシミが付いてる。。。。

 

夜中に人知れずかなりバタバタと苦しんでたんだろうな。。。。ほんとにごめん。。

 

それにもう一つ気が付いたのがシャツが汗でびっしょり。。。

夏の夜の出来事。うつ伏せでバタバタしてたらそれは大汗もかきます。。。ほんとにごめん。熱中症にならなかったのが不幸中の幸。

 

水をたっぷり飲ませて、シャツを着替えて、ちょっと落ち着いた時に、急に自分が情けなくなって、涙ぐみながらおじいちゃんに謝りました。。。

 

「ごめんごめん、ほんとにごめん。。。」

 

 

伯母がいなくなって1階に一人きりにしてしまったことに対する罪悪感と、

そんな中、浮かれてキャンプだのショートステイなど。。。

うつ伏せに転んで、助けを求めたのに朝まで気が付かないこの体たらく。。。

こんな年寄りが一人汗びっしょりになるまで苦しんでいたなんて。。。

 

いままでおじいちゃんにしてきた自他共に認める「善行」が一夜にしてチャラになった気分でした。。。「とんだ親不孝野郎だ俺は。。。」みたいな。。。

 

激しい罪悪感で、涙がでます。

 

 

私:「ごめんね、おじいちゃん。もう今日から行くキャンプはやめるよ。」

おじいちゃん:「キャンプに行くのか?」

 

おじいちゃん、たぶんキャンプの事もショートステイの事も忘れてます。

 

私:「そう。長男は受験だから家に残るけど、次男と長女と4人で伊豆にいく予定だったんだよ。」

おじいちゃん:「それはいいなぁ。是非行ってきなさい、行ってきなさい。」

 

これ、数日前と同じ会話だよ。。。

 

私:「ほんとはおじいちゃん、今日からショートステイだったんだよ。」

おじいちゃん:「そうか。。。お前が言うなら行くよ。」

私:「いや、今朝のおじいちゃんの転倒に気が付けなくて、情けないし申し訳ないし、とてもキャンプなんか行けないよ。ほんとうにごめんなさい、ごめんなさい。。。」

おじいちゃん:「なんだ気にするな。俺は大丈夫だ。お前が謝る事はない。キャンプに行ってきなさい。」

 

なんだか、嘘みたいな映画のワンシーンのような状況に。。。。

 

こういうやり取りを経験すると、やはりとても認知症とは思えない。。。

 

 

子供達にも今朝の出来事を話すと。。。

娘:「おじいちゃん大丈夫なの? ケガは大丈夫なの?」

次男:「別にキャンプに行けなくてもいいよ。おじいちゃんが心配だよ」

 

ショートステイのお迎えが来るギリギリまで考えましたが、ショートステイの方がキャンプを中止にして家に居るより、実はより安全な環境だということに気が付き。。。

 

おじいちゃんにも何度も「行ってきなさい」といわれるので、キャンプは決行になりました。

 

ショートステイのお迎えの方には夜中に転倒してそのまま寝てしまったらしいこと、その時に顔にけがをしてしまったこと、骨折はしていないと思われる事、私達のキャンプ行きを容認してくれてることを告げ、「6時間おきぐらいに電話します」と約束し、いざお別れ。

 

 

その後、やはりショートステイからは「転倒した時に胸を打っているのでちょっと痛いと言っているが、施設の看護婦さんは病院に行くほどでもないとのこと。一応家族の了承を得たいので」という確認の電話以外は、心がザワザワするような話もなく。。。

 

2泊3日のキャンプを終え、無事におじいちゃんと再会できたのでした。。。。

 

あの時の申し訳なさは、今思い出しても胸がキューっと痛みます。

 

あの朝、あのおじいちゃんのうつ伏せの姿を見た時、ほんとうに死んでしまったと思いましたし、そのあとの強烈な罪悪感ったら。。。

 

 

この日を機に、この中途半端な介護で良いのか?

必ずしも、家で一緒に住むことがほんとうにおじいちゃんにとっての安全なのか?

私以外の家族に、こんな罪悪感を結果的に味合わせても良いものなのか?

 

そんな事を考え始めたのでした。。。