おじいちゃん介護のお手紙メモリー

おじいちゃん介護のお手紙メモリー

数年間に渡る父の介護が、父の死去とともに終わり早1年、いろいろあった出来事をイラスト・レターにしたため、介護に協力してくれた3人の子供たちにちょっとずつ送ることにしました。ただ送ってももったいないので、ブログに記録し、同じような介護生活を過ごしている方々に紹介しようと思いました。いつまで続くか、どこまで書けるかわかりませんが、笑いあり、苦労あり、涙ありの介護生活をどうぞご覧ください。

リフォーム4 三角庭の工事当日。。。

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No. 49

<2019年5月15日 私から長男へのレター>

とうとう来ました、三角庭撤去工事の日。。。

 

おじいちゃん(父)の物忘れの状況、そして誰よりもこの三角庭を愛している気持などを鑑み、数日前から電話で撤去の理由、撤去日の段取りをおじいちゃんに話し続けました。

 

私はまだ同居前なので、横で寄り添って背景や事情の説明ができなかったため、電話だけが頼り。

 

さらに、当日は大阪への出張で、工事に立ち会うこともできず。。。

 

なので朝は大阪出張前に再度おじいちゃんに電話を入れて、綿密に打ち合わせました。

 

おじいちゃん、「お前の言うことは良くわかった。いろいろと考えてくれて良い息子を持った。お前の言う通りにするよ」と機嫌よく言ってくれます。

 

なので、安心して大阪へ。。。。「おぉ、結構すんなり行くかも?」

 

 

ところが。。。。

 

昼過ぎにリフォーム業者から電話が!!!!

 

しかも切羽詰まった声っ!

 

リフォーム会社さん:「今、電話いいですか? 撤去工事に取り掛かったのですが、お父様が烈火のごとく怒って出てきて、庭を壊す話は聞いてないと言ってるんです。」

 

「しかも、元に戻せと言っているのですが、どうしたらよいのでしょうかっ??」

 

まさに「えーっっっっ」という感じ。。。。

 

大阪にいるので、おじいちゃんの顔が見えない。。。
どんな形相をしているのやら。。。

 

そう、何度も考えましたが、やはり「母との愛のシンボルガーデン」なのですから壊したくないのは痛いほどわかっています。。。

 

だから何度も何度も説明して、”心を鬼にして”、”致し方なく” 決めたこと。。。
”腹をくくって” 決めたこと。。。

 

おじいちゃん、やっぱり怒ったか。。。

 

実はこのおじいちゃんにとって不愉快な提案について、おじいちゃんは一度も怒ったことがない。予想に反して「お前の言う通りにする」という回答だったのです。。

 

なので怖い。。。予期せぬ反応。。。心のどこかで予期してはいたけど。。。。笑

 

 

私:「はい、わかりました。やっぱり忘れちゃったのかなぁ? とにかく説得しますから電話代わってください」

リフォーム会社さん:「了解です。今、工事止めてますからご安心を。では、お話しください!」

私:「おじいちゃん、お庭の撤去の話はずいぶん前からしたと思うんだけど、忘れちゃったかな? おじいちゃん、お庭大切にしてたし、こんなの本望ではないんだけど、僕たちが引っ越しするには必要なんだよ。わかってくれる?」

おじいちゃん:「そんなこと言ったって、壊すことないじゃないか。他に方法はないのか? いろいろ植えたりしてるし、壊すことないじゃないか。。。」

私:「本当にごめんね。説明が悪かったのか、十分じゃなかったかもしれないね。でもどうしても必要なんだよね。なぜなら、云々。。。。。。。。。おじいちゃんも、これOKしてくれたよね?」

おじいちゃん:「。。。。そうか。。。わかった。お前がそういうなら。。。。俺もOKって言ってたんだな? じゃあ、しょうがないな。。。わかった。言う通りにするよ。。。。」

 

なんだか、とーーーーーーっても後味の悪い結果に。。。。

 

大阪のとある駅前、スーツ姿で、しかも東京弁(標準語)で電話に向かってこんな会話をしていたのですが、まわりの大阪のおばちゃん、おっちゃんはどんな感じで見てたんだろう。。。

 

おじいちゃん、説明を耳で聞いているうちは撤去の実感が無かったけど、実際にショベルカーが来て、バキバキ音をたてながら壊していくのは、きっと見るに堪えなかったんだろうな。。。

 

前のエピソードでも紹介しましたが、少なくとも10年間は栄華を極めた「母との愛のシンボルガーデン」で、それを壊すんですから。。。

 

私からの自称 ”正当な”「撤去の理由」も、こんな状況ではほとんど霞んで見えますね。。。。見え透いたというか。。。姑息なというか。。。

 

 

永遠のテーマですが。。。私達夫婦の結論。

介護には家族の同居が必須で、同居には同居家族の強いモチベーションも必須。今や責任感や義務感だけでこれに挑んでもすぐに精神を病むことになる(なりそう)。

 

さらに同居のための環境作りは、僭越ながら「介護する側の視点」ももたたないと、これもまた精神を病むことになる(なりそう)。

 

「リフォーム」はこれらの永遠のテーマ、「気持ちの問題」を解決する最も有効な手段であり、介護する側、介護される側で対等に、かつたくさんの妥協のプロセスで実現されるものだと、当時は特に強く思っていました。

 

なので、”心を鬼にして”。。。。。

 

 

考えてみると、工事の当日、現場にいなかったのは良かったかもしれません。

 

おじいちゃんの悲しい顔を見なくてはならないし、むしろ私自身が壊されていく三角庭を見て泣いちゃったかもしれません。。。

 

その場にいたら、「決断した理由」というものが身勝手で浅はかだったのではないかと、きっと心が張り裂けそうになっていたかもしれません。。。。

 

お母さん、おじいちゃん、ほんとごめんなさい。。。

 

 

 

撤去された三角庭の後には立派な駐車場と、退避スペースが設置され、退避スペースには溝を切って玉竜をギッシリ植えました。退避スペースと家の外壁の間には心ばかりのガーデンスペースも設けていろいろな植物を植え、三角庭の面影を。。。。玄関前にはポストと並んで「新しいシンボルツリー」にオリーブ。なかなかの出来栄えです。

 

もちろん、おじいちゃんも綺麗になったと(三角庭は晩年、草ぼうぼうで荒れ果てていたしね。。。)、褒めてくれました。

 

はい、もちろん約束通り、かみさんは機嫌よく月に1度、おじいちゃんと伯母さんを車で病院へ送迎し(つまり月に計2回)、駐車場にはスルっと駐車するのでした。

 

待避所は、後にやってくるおじいちゃんと叔母の杖や車椅子時代、そしてデイサービス、ショートステイ時代に期待通りの活躍をします。

 

そして、ようやくその頃に、「辛かったけど、おじいちゃんにはすまなかったけど。。三角庭を撤去して退避スペースにしてほんとに良かった」と心底思うのでした。。。。