おじいちゃん介護のお手紙メモリー

おじいちゃん介護のお手紙メモリー

数年間に渡る父の介護が、父の死去とともに終わり早1年、いろいろあった出来事をイラスト・レターにしたため、介護に協力してくれた3人の子供たちにちょっとずつ送ることにしました。ただ送ってももったいないので、ブログに記録し、同じような介護生活を過ごしている方々に紹介しようと思いました。いつまで続くか、どこまで書けるかわかりませんが、笑いあり、苦労あり、涙ありの介護生活をどうぞご覧ください。

遺言書3 同居にあたり作成を決意

f:id:oohiratt:20190503091831j:plain

No. 43

<2019年5月3日 私から長男へのレター>

先に行ったかみさんの養子縁組後、いよいよ遺言書の作成にとりかかりました。

 

遺言書の作成の決断は、私が先に死んでしまった場合の相続関係をきちんとすべきと考えるに至ったからです。

 

万が一、私が先立ってしまっても、おじいちゃん(父)の死後、かみさんや子供たちへの相続が確実に実行されるようにあらかじめ家族で了承を得ようと思ったのでした。

 

私以外の法定相続人は姉だけなのですが、うちの家族と姉夫婦とは、クリスマスを一緒に過ごしたり、キャンプに一緒に行ったりと、姉夫婦に子供がいないこともありますが、子供達にクリスマスプレゼントやお年玉、入学祝いなどもきちんとしてくれて、他人から見てもとても仲が良い関係でした。

 

ですので、「遺言書」なんか作らなくても全く問題ないのでは?

 

 

そんな気が変わったきっかけが、やはりおじいちゃんの認知症でした。。。

 

そう、元気な時は正しい判断がきちんとできるのは当然なのですが、一度、記憶に混乱が生じたり、記憶がきちんととどまらない、つまり約束を覚えていられない状態になっている姿を痛いほど見てきたので。。。

 

つまり、私も姉ももう50代前後ということで、これから10~20年長生きした時に、どちらかが認知症の憂き目に遭ってもおかしくない。

 

認知症にならなくても、事故や病気で倒れたら意思表示も交渉もできなくなる。。。

 

そんな最悪の場合、相続の分割を明確にしておかないと、残された家族がその処理をしなくてはならない。。。

 

おじいちゃん、当時はまだ自分の意見を示すことができた状態(ただし、すぐに記憶から無くなる。。。)でしたので、この時期を逃してはいけないと判断しました。

 

もちろん、仲の良い姉夫婦にはその趣旨をきちんと説明し、快く同意を得ることができたので、このような面倒な「遺言書」作成に着手できたわけです。

 

内容は、以下の骨子で進めました。

・養子縁組したかみさんにも相続権が生じること
・土地・建物は嫡子である私の長男への引継ぎも兼ねて私が相続すること
・その他の現金などの財産は姉、かみさん、私で3分割すること
・おじいちゃんと伯母は私が責任を持って扶養すること
・私が先立ってしまった場合は私の相続分はかみさんへ委譲すること

 

前回にも触れましたが、姉夫婦には子供がいないことや、遠方に住んでいるためにおじいちゃんや叔母のお世話が物理的に不可能ということで、この骨子は全く異論なしでした。

 

肝心の被相続人であるおじいちゃんは、「おまえの正しいと思ったことをやれ。任せる」と言うのですが、さすがに大切な話なのできちんと理路整然、説明しました。

 

説明をすると「ふむふむ、分かった」と言ってくれるのですが、5分程経つと「もう一回説明してくれ」と。。。

 

はいはい了解と、また説明すると、やはり「ふむふむ、分かった」と再度言ってくれるのですが、5分程経つとまた「もう一回説明してくれ」と。。。

 

これを、実家に行っては繰り返し。。。繰り返し。。。

 

 

遺言書作成は、ネットで調べても、人に聞いても、「素人が作ったら有効にならない場合が多い」との事だったので、司法書士さんにお願いすることにしました。

 

費用はだいたい10~20万円が相場でした。
公証役場で第三者に正式に認めてもらう手続き等を考えると、この出費は内容証明代のようなものと割り切りました。

 

司法書士さんの交渉相手は私達相続人ではなく、財産の所有者、被相続人のおじいちゃんです(費用の名義もおじいちゃんです)。

 

したがって、おじいちゃんにどのような内容にしたいのかを聴取するところから始まります。

 

お察しの通り、おじいちゃんの状態ではなかなか話が進まないので、私が先に示した骨子を「おじいちゃんと話し合った内容」として紹介し、司法書士さんがおじいちゃんに対し「これで良いか?」、「他に記載したことはないか?」といった質問をすることで、了承を得るというプロセスを踏みました。

 

被相続人認知症の場合は、その遺言書自体が無効になるのでは?

 

はい。被相続人の判断力が落ちていることをいいことに、悪質(多くの場合、当の本人は「正当だ」と考えてるのですが)な相続人が自分に一方的に都合の良い内容で作成してしまう場合があるからです。

 

実はこの時、おじいちゃんはまだ「認知症」の確定診断はされておらず、私たちが一方的に「かなり物忘れの進んだ老人」と考えていた時期でした。

 

司法書士さんにも一応、「無効にならないか?」と聞いたものの、「お話ししたところ、記憶力に問題があるものの、内容はきちんと理解できており、受け答えもできているので全く問題ない」との回答でした。

 

きっと、内容がこれからの我々の同居とおじいいちゃんや伯母の介護を前提としたものであり、さらに姉にも骨子の内容を確認してもらっているという事実が良かったのかもしれません。

 

 

それにしても司法書士さんが「この内容は悪質だ」とか、「被相続人に判断能力がない」と判断することはあるのでしょうか?

 

被相続人の依頼に基づき作成しますし、最終的には公証役場で公証人と証人の前で確認を取るものなので、正式な判断はしないように思えました。というか、その判断ができる医学的知識も権限もないので致しかたありません。。。

 

なお、遺言書には被相続人の署名しかないので、いわゆる遺産分割協議書のように相続人全員の署名もありません。よって相続人の意思は全く反映されない性質のものとなりますので、我がおじいちゃんのような場合は、公式ではないものの相続人の了承(それぞれに何か不幸があってもきっちり記載通りに執行させるという意思表示)をきちんと得ておいた方が良いと思いました。

 

ということで、この円満な内容の遺言書(本当に必要だったかは、今になっては疑問ですが。。)は、ここから数カ月かけて作成されるのでした。。。