おじいちゃん介護のお手紙メモリー

おじいちゃん介護のお手紙メモリー

数年間に渡る父の介護が、父の死去とともに終わり早1年、いろいろあった出来事をイラスト・レターにしたため、介護に協力してくれた3人の子供たちにちょっとずつ送ることにしました。ただ送ってももったいないので、ブログに記録し、同じような介護生活を過ごしている方々に紹介しようと思いました。いつまで続くか、どこまで書けるかわかりませんが、笑いあり、苦労あり、涙ありの介護生活をどうぞご覧ください。

介護生活83 胃ろう。。。悩む悩む。。。

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No. 151

<2019年11月4日 私から長男へのレター>

先生からおじいちゃん(父)への胃瘻の選択肢が提示されてからかなり悩みました。

 

本人の意思が最終的には重要なのですが、おじいちゃんは直近の記憶が直ぐに無くなりますので、約束というものができるわけでも無く、事実、胃瘻をするかどうは、家族の判断が非常に重要になってくるのです。

 

つまり、本人が認知症の場合は、寄り添う家族の意向が決定に非常に影響するということです。

 

いつものように、おじいちゃんから「わかった、お前のしたいようにしろ」と言われても、これはおじいちゃんの身に起こる事なので、非常に悩むわけです。。。

 

 

そこで、とても優秀で経験豊か、信頼できる第三者の意見を聞こうと思い、老人ホームのケアマネさんに電話で相談することにしました。。。

 

私:「やはり胃瘻の設置がベストではないかと先生から提案を受けました。」

ケアマネさん:「そうですね。いまのお父様の状況であれば胃瘻がベストかもしれません。」

私:「胃瘻は、父が元気だった頃、一番嫌がった選択肢です。でも、父の事を考えたら父に強く進めるべきでしょうか?」

ケアマネさん:「胃瘻については良くご存知ですか?」

私:「はい。私なりに色々と調べました。先生からもいろいろと伺ってます。まず誤嚥性肺炎の予防になること、手術は簡単であること、胃への栄養の送り方やカテーテルの消毒などについてはある程度の慣れが必要なこと、ただし誰にでも直ぐにできるようになるとのこと、一度設置するとほぼ外せなくなること。。。などなどでしょうか?」

ケアマネさん:「特養はどうされますか?」

私:「特養からは、胃瘻にする場合は胃瘻のコントロールが完全にできるようになってから来て欲しいとのことでした。なので、胃瘻にするなら早急にしないと、また申請からのスタートになります。」

ケアマネさん:「そうですか。もうどうするか決められたのですか?」

私:「いや。。。とっても悩んでます。。。元気な頃の父は非常にグルメで、認知症とはいえ、食時は非常に楽しみにしていると思います。。。胃瘻にしたらもう口から食べれないようになると思うと不憫で。。。」

ケアマネさん:「いいえ。大丈夫、胃瘻にしても食事は口からでも食べれますよ。併用している患者さんは沢山いますし。そこはご安心くださいね。」

私:「もうひとつ悩みどころが、やはり無理な延命は本人も望まないと思う事。父は認知症ですので、自分自身の尊厳について今どのように考えているのか、長生きすることに対する欲求がどの程度か、全く確認の術がないと思っています。つまり私の判断に大きく委ねられてしまうのではと。。。これはかなり荷が重いです。。。」

ケアマネさん:「そうですね。。。家族は悩みますね。。。」

 

ちょっとここでしばらく沈黙があったのですが、この後、ケアマネさんがゆっくりとご自身の経験をお話をしてくださいました。。。

 

ケアマネさん:「実は私の父も胃瘻ではないのですが、中心静脈栄養(カテーテルで静脈に直接栄養成分を注入する方法)を実施したのです。ある病気でもう余命もいくばくかだったので、家族も、おそらく本人も延命は望まなかったのですが、病院の判断で実施してしまったのですよね。。。」

 

もちろん今はこのような医療行為は本人の承諾、できない場合は家族の承諾が必須ですが、昔の話なので当時は医師の勧めに逆らえない、あるいは知識不足で同意してしまったのでしょうか?

 

ケアマネさん:「この状態が幸いというか、私の父はその後しばらくして亡くなりましたが、こんな状況で延命することについては非常に考えさせられました。。。」

私:「はい。私も正直、介護というものにも最後の瞬間があるんだと。。。そう、いつか終わりがあると考えられるからこそ今、全力で継続できるのであって、もし終わりのイメージがなかった場合は、正直、自分の人生はどうなってしまうんだろうと考えてしまいます。。。介護生活がこの先10年も、20年も続いたらどうしょう。。。とか、想像つかないんですよね。。。かなりエゴなんですが。。。寿命というのがその絶対的なイメージなんですよね。。。それが違ってしまうと。。。」

 

このケアマネさんには、なぜか何でも本音で話せます。他人の事なのに、一つ一つ丁寧に私の話を聞いてくれて、自分の経験談までお話ししてくれるのです。私もかなり本気で話をしました。

 

ケアマネさん:「大丈夫です。それはとても正常な気持ちです。とにかく今は、お父さまの意思を確認してみてはどうでしょう? 延命とか胃瘻とかは、やはりご本人の死生観によるものですから、胃瘻するにしてもしなくても、家族が良かれと思って行うものとは違うと思います。本人の気持ちであれば結果はどちらも正解です。」

私:「なんだかこういう話ってやっぱり家族のエゴみたいで嫌ですよね。延命が嫌なのは自分だけで、しかも私が何かのきっかけでそんな状態になってしまった時に、果たしてその時に延命措置はしないでくれって即座に、あるいは心から言えるのかもわからないですし。。。自分の話でないから、こんな他人の死生観に関して勝手な事が言えるんですよね。。。」

ケアマネさん:「悩ましいですよね。みんな悩みます。。。それでいいいのです。それから一つ、胃瘻すれば誤嚥性肺炎のリスクが大きく下がるというのは誤解です。肩の硬直は治りませんし、嚥下機能が落ちているのであれば、唾液が喉を伝って気管に入り込むのです。ですので、胃瘻にしてもやはり肺炎は再発します。。。なので、必ずしも延命にはなりません。」

私:「そうでしたか。。。胃瘻したからと言って肺炎のリスクからは逃れられないのですね。。。でも、少なくとも、食事を提供するスタッフさんの気持ちは楽になりますよね。。。自分の食事介護で肺炎になって死んでしまったら、致し方が無いにせよ、かなり悲しい経験になってしまいますよね。。。そういったことも家族としては悩ましいところです。」

ケアマネさん:「はい。それは確かにありますね。でもそうなってもちゃんと食事介護は最善を尽くしますのでご安心ください。初めてではないですし、我々はプロです。」

私:「そうだ、胃瘻になってもこの老人ホームには戻れるのですか?」

ケアマネさん:「はい。大丈夫です。どっちにしてもいつでもお戻りください!」

 

かなりの長電話でしたが。。途中涙ぐみながら。。頭と心の整理がついたのでした。

そう、とにかくおじいちゃんに話してみよう!